楽器演奏をする人たちにとって音色は永遠の課題ですね。
本記事では、現役芸大生の筆者の体験談と共にフルートの音改善の効果的な練習方法について伝授!
美しい音色を手に入れて、もっとにフルートの演奏を楽しみましょう!
はじめに
フルートをやっていて、こんな悩みを持っている方は多いのではないでしょうか?
そして、その悩みを解決するために、皆同じような事を言われてきたのではないでしょうか?
どれも良い音を出すには大切な事です。
けれど、それを意識して、実践しても、なかなか改善されない方は多いと思います。
そして、情報があふれるこの時代、プロのフルート奏者の方が有益な練習方法が紹介されています。
ただ、あまりにも色々ありすぎて、どれを先にやった方が良いのか、自分が本当にしなくてはならない練習は何かが分からなくて混乱の種になっていることも…
私自身、ロングトーンやモイーズのソノリテやさまざまな練習に必死に取り組んでも、なかなか音が改善されず、音への悩みを抱える1人でした。
今回は、私がどうやって音を改善できたかの経緯と様々なレベルの方に合った効果的な練習方法についてご紹介いたします。
音が汚くて悩んだ中学時代
中学時代、吹奏楽部だった私は、常に周りから音の汚さを指摘されてきました。
シャーリング(息の音)が大きく、出る音がか細く、結果、掠れた音になっていたのです。
しかし、音を綺麗に鳴らそうと思うほど、最初のアタック(発音)が強くなり、違う音が混じらないように、鋭くスピードのある息になりました。
そうやって何とか音を出していたんです。
特に高音なんかは、どんな音よりも力強く吹かなくてはならず、キツくて響きのない音に…( ´ ཫ ` )
ただ、そういう事をしていると、アンブシュア(唇回り)に力が入ってしまいますから、練習後は常に唇周りは筋肉痛のようになっていました。
唇の両端に皺が刻まれます🔪
低音に至っては、アンブシュアが力むと音が出ません。
レガート(スラー)である程度の高さの音から降りていくなら、何とか音は出ますが、単発で鳴らそうとしようものなら、1発で音を当てられることなんて殆どありません。
普通に音を出そうとする時点で、こんな感じなんで、合奏中に「フルート、もっと大きく!!」と言われても、内心は「今、自分の中で1番最大なんですけどΣ(゚д゚;)」となってました。
更にロングトーンも、特に高音域になるほど、音を安定させて吹くのがとても難しかったのです。
中音域よりも息の減りも早く、いつもプルプルさせていました:(´◦ω◦`):プルプル
ただ、あんまりプルプルすると音も揺れるので、それが先輩にバレると…
「お腹の支えが足りない!腹筋,背筋50回💢」
と筋トレをさせられます。
ピッチが合わなくてもやらされます。
それは中2になり、後輩が出来ても、音が改善されることはありませんでした。
新しく入部した後輩の中に、フルート経験者でとても上手な子がいました。
案の定、私はその子と比べられ、「たぁこより、後輩の方が音が綺麗なの気にならないの?」と同級生に指摘される始末でした・・・
気にならないわけがありません!
焦りを感じた私は、毎日ロングトーンや腹筋が割れるくらいの筋トレに励みました💪🔥
ロングトーンは、当時吹奏楽コンクールの課題曲の譜面にのっている音を、最初から最後まで、基礎練とは別に毎日全てロングトーンをしたほどです。
しかし、それでもシャーリング(息の音)がなくなることはありませんでした。
音はしっかりしてきてはいましたが、それでも息の音が目立っていたようでした。
そして、一向に良くならない自分のフルートの音に、コンプレックスを抱くようになってしまいます。
個人レッスンを受けた高校時代
高校に入り、フルートで音大を目指す事にした私は、学校近くの個人教室に通う様になります。
一応、中学の吹奏楽部でも、プロによるレッスンはありました。
しかし、個人レッスンというより、フルートパート全員を対象にしたグループレッスンが中心でした。
それに、大体コンクール前にレッスンを2、3回だけ受けるだけで、定期的に指導を受けれるわけではありません💦
こういうのって定期的に見てもらう事に意味があるので…
初めてのレッスンの日、先生は私のフルートの音を聴くと、「君は、中学で吹奏楽をやっていたのかな?」と聞いてきました。
それに対して私が「はい。そうです。」と答えると、先生から「吹奏楽部出身者特有の悪い吹き方をしているね。」と言われてしまったのですΣ(゚д゚lll)
私は先生に自分の息の音が凄くて、音が汚いという悩みを打ち明けました。
先生「息の音はなるもんだよ?プロの演奏を間近で聞けばわかるけど、めちゃくちゃ息の音してる。その分、音もかなり鳴ってるし、響いているけどね。」
更に、音をよく鳴らすために、ロングトーンや腹筋背筋、先輩に教わった練習法を沢山やった方がいいか聞きます。
先生「ロングトーンはやった方がいいけど、他の基礎練習も満遍なくやった方がいい。腹筋背筋は意味がない。体力つけるならいいけど、フルートを吹くための筋肉は沢山吹くことで身につくし、使っている筋肉がそもそも違う。」
先生は私の悩みがさも大したことのないようにさらっと、答えてくださいました。
寧ろ、これまで教えて貰った事を否定するかのようでもありました。
そして…
先生「吹奏楽部で教わったことは全部忘れていい。所詮、君の先輩もたかだか2、3年フルートをかじっただけの素人。素人がよく分かりもしないのに、それが正しいことのように変なことを教えるからね。君が上達しなかったのは、素人に不適切な事を教えられたから」
これが1番の衝撃でした⚡️
今までやってきたことを否定されているのかなと思っていたら、全面否定されていたのです‼️
ですが、その先生の言葉が私のコンプレックスを解消してくれたのです。
実は初めてのレッスンで、「君の音は汚すぎる。フルート、向いてないよ。」と言われたらどうしようかと不安でいっぱいだったのです。
私が上達しない原因が適切な指導と、練習ができていないことだということが分かって、とても嬉しかったです。
そしてレッスンが始まり、少しずつ、しかし中学の時よりも確実にフルートが上達していきました。
そして、フルートの音作りで有名なモイーズの「ソノリテについて」のロングトーンの指導も受けました。
モイーズの「ソノリテについて」の教本の最初にある「音色と音の同質性」は教本を持っていない人でも音づくり、音の改善の為に練習している方が多い程、フルート界では有名な基礎練です。
半音階ずつロングトーンをしながら下行したり、上行したりする練習です!
それをやっておけば音が綺麗になると信じて、やっている人は多いはずです。
中学の時もやっていましたが、先生の指導を受けながらやると、一回やるだけで、かなり疲れてしまいました。
どれだけ、やり方が間違っていたかが、分かった瞬間でした。
それに筋トレしなくても、フルートを吹くのに必要な筋肉が鍛えられることが実感出来ました💪
これが本当の意味でのお腹を使うってことなんだと思いました✨
筋肉痛になりそうなほど…💦
お陰で、音は良くなりましたが、この時でもまだフルートの音を改善する為の練習ができているのか、不安ではありました。
中学の時に比べたら、かなり良くはなっています。
苦手な高音や最低音も鳴るようになりましたが、明確に良くなった原因が自分で分かっていなかったので、それ以上に自分が思うような音を良くするための練習ができていませんでした😓💦
職場のイベントへの参加とブランクによる音の劣り
私は現在、芸大に在学中でありますが、実は一度音大に進学しております。
無事に卒業してからは音楽とは関係のない職につき、フルートから離れていました。
当時の職場には地下室があり、休憩時間にそこでフルートの練習をしておりました。
しかし、早朝からのお仕事だったので、休憩時間は睡魔が襲い、本当に気分が乗った時だけ吹いていました。
ある日、職場のイベントでフルートを吹くことになったため、練習を再開する事にしました。
ただ、音大を卒業してから2,3年が経ち、フルートを殆ど吹いておらず、ブランクがあった為か、音が鳴りづらくなってしまっていたのです💦
高校や音大時代に先生方に教えて頂いた事を1人で練習していく中で、音をよくするにはどうすれば良いのかひたすら考えました。
中学時代とまではいきませんが、それ程音が出しづらく、響かなくなっていたのです。
モイーズのソノリテに一生懸命取り組みましたが、吹いてない期間が長いため、なかなか感覚を取り戻せません。
そして、悩みながら練習していたある日、ひとつのひらめきが、フルートの音の劇的な改善に繋がりました!
ロングトーンをしても音色が改善されなかった理由
音大時代、師事していた先生のレッスンでも、当然のようにモイーズの「ソノリテについて」の教本を使って指導されました。
(高校時代は教本は使わずにやっていました。ロングトーンの内容自体は単純で、教本がなくても、暗譜で練習ができたからです。それに教本自体、値段が高い💦)
高校時代と違ったのは、「音色と音の同質性」の練習だけではなく、同じ教本の中の「アタック(発音)と音の連結」の練習も加わりました。
ソノリテはどんな音も1番吹きやすい音と同じくらい難なく、響きを保って吹けるようにするのが目的の教本です。
「音色と音の同質性」のロングトーン課題では、一番最初に良い響き音出せたら、そこから比較的近い音程に移りつつ、一番最後の音に到達するまで、その良い響きを保つように気をつけます。
どんな音でも音色、響きが変わる事なくコントロールする事で、全体的な音の質の向上にも繋がります。
では、「アタック(発音)と音の連結」はどうでしょう?
その名の通り、まずは課題1のアタックで、確実にその音が良い響きで鳴るように訓練し、課題2からは発音での良い響きを保ったまま、隣り合った音が滑らかにつながるように訓練します。
結局は、アタック(発音)に視点が向けられだけで、「音色と音の同質性」と良い響きの音を保つというのは変わりません。
ただ、私の先生はその練習をする際、課題1をタンギングをつけずに、息だけでやる練習を最初にするように指導しました。
私は、それを思い出して、ソノリテのロントーンの後に、その課題を息だけで実践しました。
学生時代にも思ったのですが、この「アタックと音の連結」は普通にやるのでも、難しく、とてもしんどいのです。
タンギングだと舌を使うことで、勢いがついて音を鳴らせたのが、その舌の補助がなくなり、息だけになると音を外す確率が高くなるのです。
それに自分が出せる1番大きな音を鳴らさなくては行けない為、息を吐き出すためにお腹をかなり使います💦
しかし、大きな音とは言え、息が太すぎても、細すぎても、スピードが速すぎても、遅すぎても、角度がちょっとでもズレても上手いこと音が鳴ってくれません。
息をコントロールしながら、音が鳴るポイントを探していきます。
苦戦しつつも、学生時代を思い出しながら、やっていました。
タンギングがある方が簡単に音が鳴るのに……(*゚ロ゚)ハッ!!
突然、私はある事を閃きます。
これって、タンギングに頼らずに息だけで、どの音も鳴るようになったら、音が良くなるんじゃない?
今までの経験が走馬灯のように頭を巡ります。
そして、ロングトーンで倍音(別の音)が鳴ってしまったり、高音が細くなったり、息が続かなかったのは、タンギングの勢いに頼っていて、息のコントロールを疎かにしていたからじゃないか?と言う考えに至ります。
そこで、ノンタンギングで同じ音を延々と短く吹く練習をし始めました。
♩= 60 で4分音符で、全ての音を短く大きく吹きます。
たった、この練習だけでも音を沢山外し、とても苦戦しました。
そして、それだけタンギングに頼って、音を鳴らしていたことに気づきました。
しかし、別の音が混じらず、確実に音を当てられるようになり、そこでロングトーンをすると、今までにないくらい楽器がビンビン響くようになったのです✨
私は、初めてその楽器本来の力を引き出しているように感じました。
更に、私のフルートの練習を毎日聴いていた音楽未経験の同僚が、「なんかめちゃくちゃ音良くなってない?」と、その練習した日のうちに気づくほどでした。
同僚の言葉、そしてよく鳴ってくれる楽器の反応が嬉しく、次第に8分音符、8分3連符、16分音符と音符を細かくしていきました。
そして気づけば、力まないと鳴らせなかった高音が、思った以上に簡単になってくれるようになりました。
アンブシュアに力が入らなくなったんです。
この時にようやくモイーズの意図する事に気づきました。
モイーズは「ソノリテについて」の教本に、その練習をすれば「確実に音が良くなる」とは書いていません。
教本は常にアンブシュアの柔軟性について、重点をおいて書かれていました。
アンブシュアに力が入っていると、音が響かなくなるんです。
特に高音を吹く時にアンブシュアに力が入ってしまいがちでしが、高音を出す時に必要なのはアパチュアの形と息をコントロールする事でした。
私はソノリテをやれば音が良くなると思っていました。
吹いている時、アンブシュアを意識しているようで、本当は意識できていなかったんです。
モイーズは響きのある音を吹くためには、アンブシュアの状態をどの音でも一定に保つ必要がある事を伝えたかっただと、思いました。
そこを意識できるようになって、初めてソノリテの練習効果が出るんだと気づきました。
今まではただ音を鳴らしているだけだったんで、音が鳴っているようで、響いてはいなかったのです。
そこから私は、1番楽に音が鳴るポイントと、響きのある良い音を吹いている時のアンブシュアの状態に意識を向けるようになりました。
それでもアンブシュアに力が入って、音が苦しくなる時があります。
そういう時はいくら気をつけても、それが余計に力が入ってしまう事になるので、一旦休むようにしています。
曲を吹いている時も、高音へ向かう時も、アンブシュアを意識するだけで響きが変わりました。
アンブシュアに負担をかけずに吹こうとすると、それだけ息のコントロールが重要になってきました。
しかし、息のコントロールをし、息を音が鳴るポイントにしっかりあてると、無駄な息を使うことなく、省エネで音を鳴らすことができます✨
タンギング頼りで出す音は、その突発的な舌の動きの反動で一時的に音が鳴っていただけで、息がポイントに当たっておらず、その音を維持するためには、それだけ息の量とスピードが必要となります。
そして、いくらその状態でロングトーンをしても、フルートの音が良くなるわけがなかったんです。
私が音を改善するためにしないといけなかったのは、ロングトーンではなく、アタック(発音)だったのです。
因みにモイーズのソノリテはある程度、フルートが吹けるようになった人を対象としています。
適切な指導を受け、アンブシュアが安定し、息のコントロールがある程度出来、良い音が奏でられることを前提とした教本でした。
確かに全くの初心者がやるには、なかなか難易度が高い教本だし、よく理解した奏者の指導があるからこそ力を発揮するものだったんですね。
さいごに
ロングトーンの練習はとても意義のあるものですが、まず初めは音が鳴らしやすいポイントやアンブシュア、ブレスの状態はどこかを探すと良いでしょう。
人によっては「音が探し」と呼ぶ人もいるそうです。
各音域の音が鳴らしやすいポイントやアンブシュアの状態などが分かるようになったら、その状態、響きを維持できるように息をコントロールするトレーニング、ロングトーンをしましょう。
私はこの発音練習の目的を理解して、ひたすら取り組みました。
レッスンを再開した時に先生から「音が凄く良くなったね」と言われた時は、とても嬉しかったです。
音が響くようになったので、遠鳴りもするし、大きな音も出せるようになりました!!
音を遠くに響かせるってこういうことだったんだ!!
先生の他の生徒さんにも「どうやったら、そんなに大きな音を出せるの?」と聞かれるくらいです。
この発音の重要性に気づいた当時、その発見を裏付けるために様々な資料を読みあさりましたが、ノンタンギングでの発音練習をする事で、音が改善するという事に触れている書物は殆ど見つかりませんでした(><)💦
たまにネットで、ノンタンギングの練習をしたら、音が良くなるという同じ意見を持った人を何回か見かけたくらいでした。
ただ、それもネットの情報だったので、確信が持てなかったんです。
しかし、私の師匠である先生、現在発刊されている著名なフルート奏者の本やYouTubeでのフルートの奏法解説の動画でも、このノンタンギングでの練習法が音を良くするためにとても効果がある事を述べておられます。
今なら胸を張って、ノンタンギングでの練習の効果を主張できます🙋♀️
もちろん、発音練習ができても、その良い発音の状態を維持するための練習として、ロングトーンは欠かせません!
次回は、音色改善の具体的な練習方法について参考動画と一緒に紹介していきます!